ケガを乗り越えてわかった、『本当に選手に必要な支え』とは──トレーナー兼鍼灸師としての20年

2025-12-01

ケガを乗り越えてわかった、『本当に選手に必要な支え』とは──トレーナー兼鍼灸師としての20年

スポーツでのケガが、すべての原点だった


スポーツ中のケガは、身体だけでなく心にも影響します。私自身、思うように体が動かない不安や焦りを経験し、その中で支えてくれた専門家の存在が大きな救いでした。その出来事が、のちに私がトレーナー・鍼灸師を志す大きなきっかけになります 。


ケガで思うように動けなかったあの頃


私の場合、両親がトレーナーや治療の仕事をしていたこともあり、ケガで思うように動けなかった時期でも、毎日施術を受けられる環境にありました。痛みを抱えながら試合に出る日には、その都度テーピングを貼り直してもらい、少しでもプレーしやすいよう支えてくれたことを今でも覚えています。
その積み重ねが心の支えとなり、不安を抱えながらも前を向く力につながりました。体を整えるだけでなく、気持ちにも寄り添ってくれる存在は大きく、復帰までの道のりを、一緒に歩んでもらっているような安心感がありました。この体験が、後に自分が人を支える側に立ちたいと強く思うきっかけになっています。


支えてくれた「トレーナー」と「鍼灸師」の存在


ケガをしている間は、「このまま前のように動けるようになるのか」「試合に出られるのか」という不安が常につきまといます。そんなとき、症状の説明だけでなく、「ここまで良くなっているよ」「今日はここをもう少しケアしよう」と具体的に伝えてくれるトレーナーや鍼灸師の存在は、とても心強いものでした。
施術やテーピングといった“目に見えるサポート”だけでなく、ちょっとした声かけや表情が、気持ちを前向きにしてくれることがあります。「大丈夫、一緒にやっていこう」とそばで支えてくれる人がいたからこそ、再びプレーすることに前向きになれたと感じています。


「自分も誰かの力になりたい」と思った瞬間


ケガをきっかけに、私は初めて「支える側の仕事」に意識が向くようになりました。選手としての自分を支えてもらう中で、「今度は自分が誰かの力になりたい」という思いが少しずつ強くなっていきました。
苦しい状況にいる選手や患者さんが、もう一度前を向いて進めるように背中を押すこと。そのプロセスに寄り添える仕事は、とても尊いものだと感じました。そうした原体験が積み重なり、トレーナー、そして鍼灸師として歩む道を選ぶことにつながっていきました。


20年間の現場で気づいた“本当に必要な支え”


現場に出始めた当初、私は「相手の希望をすべて聞いてあげること」が、良い支え方だと考えていました。しかし、多くの選手や患者さんと向き合ううちに、それだけでは本当の意味でのサポートにならない場面があることに気づきました。ときには耳に痛いことをあえて伝えたり、一緒に考えながら選択肢を整理したりすることが、長い目で見てその人のためになることもあります。そこから、「本当に必要な支え方」について深く考えるようになりました。


「何でも言うことを聞く」ことは支えじゃない


最初の頃の私は、「求められたことには全部応えたい」と思っていました。無理なスケジュールや体に負担の大きい要望であっても、できるだけ合わせようとしていた時期もあります。しかし、それを続けていくうちに、「今この人にとって本当に必要な選択は何なのか」という視点が抜けてしまう危うさを感じました。
その場しのぎで要望に応えることは、短期的には喜ばれるかもしれませんが、長期的に見るとケガを繰り返したり、心がすり減ってしまったりする原因にもなりかねません。「何でもYESと言うこと」が必ずしも優しさではないと気づいてからは、ときには立ち止まることを提案したり、方向転換を促したりすることも、支え方のひとつだと考えるようになりました。


一緒に考えて、一緒に乗り越えること


そこから意識するようになったのは、「こちらが一方的に決める」のでも、「相手の言うとおりにするだけ」でもなく、一緒に考えながら進んでいくスタンスです。体の状態や目標、生活環境は人それぞれ違います。同じメニューや同じアプローチを当てはめればいいわけではありません。
その人が本当に大事にしたいものは何か、今どこまでなら頑張れるのかを、対話を通して一緒に整理していく。時には厳しい選択をお願いすることもありますが、その分、「一緒に乗り越えていきましょう」という気持ちを大切にしています。そうやって二人三脚で取り組むことで、結果だけでなくプロセスの中にも、成長や気づきが生まれていくと感じています。


信頼してくれる人に全力で向き合う理由


長く現場にいると、「誰でもいいからケアしてほしい」というスタンスの方と、「あなたに診てほしい」と言ってくださる方の違いも見えてきます。どちらが良い悪いという話ではありませんが、私自身は、後者のように信頼して任せてくださる方に、できる限りの力を使いたいと考えています。
お互いに信頼関係を築きながら、「この人のために自分も成長したい」と思える関係性の中でこそ、本音で話し合い、長期的な視点で体づくりやコンディショニングに取り組むことができます。だからこそ、今は「ご縁を大切にしながら、そのご縁に全力で応える」ことを自分の軸にしています。


プロ・アーティスト・一般の方、それぞれの“支え方”


スポーツ選手、アーティスト、そして一般の方。種目や立場、環境が違えば、求められるサポートも大きく変わります。20年間の現場で向き合ってきた人たちを振り返ると、それぞれに必要な“支え方”があることを痛感してきました。その違いと共通点を踏まえながら、どのように寄り添い、力になってきたのかをお伝えしていきます。


勝ちにこだわるプロ選手に必要なこと


プロの現場では、結果がすべてと言っても過言ではありません。コンディショニングもケガのケアも、最終的には「パフォーマンスをどこまで引き上げられるか」「試合で実力を発揮できるか」という一点に集約されます。その中で大切なのは、ただ痛みを取ることではなく、「動ける体」をどう維持・向上させるかという視点です。
トレーニングやケアのメニューを組む際には、選手の特徴やポジション、シーズンのスケジュールを踏まえながら、勝ちに直結する準備を逆算して考えます。また、精神的なプレッシャーも大きいため、時には厳しく、時には緊張をほぐすようなコミュニケーションを意識してきました。「しんどいけれど、ここを乗り越えたら変わる」というラインを一緒に見極めることが、プロ選手を支えるうえで重要だと感じています。


表現者(アーティスト・エンターテイナー)を支えるということ


アーティストやダンサー、エンターテイナーの方々は、「魅せること」を仕事にしています。本番のステージや長期のツアーを、怪我なく完走することが大きな目標です。そのため、瞬間的なパフォーマンスだけでなく、「最後まで走り切れる体づくり」と「本番でベストを出せるコンディション調整」が求められます。
表情や感情の表現も含めてパフォーマンスであるため、体が重かったり痛みを我慢していたりすると、そのままステージの雰囲気にも影響します。だからこそ、体を整えることに加えて、「ここに来るとホッとする」「また頑張ろうと思える」と感じてもらえる空気づくりも大切にしてきました。安心して全力を出せる“帰ってこられる場所”としてそばにいることが、表現者を支えるうえでの自分の役割だと考えています。


一般の方の“日常を変える”サポート


一般の方を支える際に大切なのは、「日常そのものをどう整えていくか」という視点です。施術だけで一時的に楽になることはできますが、普段の姿勢や習慣が変わらなければ、痛みや不調は繰り返しやすくなります。そのため私は、施術とあわせて“生活の中でできる改善”を提案し、無理なく続けられる環境づくりを重視してきました。
次回までの簡単な宿題を出したり、実践してもらった内容をチェックしたりすることで、体への理解が深まり、少しずつ変化が積み重なります。ご自身の体と向き合うきっかけをつくり、日常が変わっていくようサポートすることが、何よりも大事だと感じています。


どの人にも共通する「寄り添い+自立」のバランス


プロ選手であっても、アーティストであっても、一般の方であっても、最終的に大切になるのは「寄り添い」と「自立」のバランスだと感じています。こちらがすべてを背負ってしまうのではなく、その人自身が自分の体と向き合い、選択できるようになることが理想です。
そのために、今の状態や必要なステップをわかりやすく共有し、一緒に目標を確認しながら進めていきます。「ここに来れば整えてもらえる」だけでなく、「自分でもケアできる」「自分の体を理解できる」と感じてもらえるような関係性を目指してきました。それこそが、長く続く本当の意味でのサポートだと考えています。


独立を決めた理由──ご縁を大切にできる環境を作りたかった


会社員として現場に立っていた頃も、多くの経験と学びがありました。一方で、「もっと目の前の人に向き合いたい」「ご縁のある方を大切にできる環境を自分でつくりたい」という思いも、少しずつ強くなっていきました。その積み重ねが、独立という選択につながっています。


現場で感じてきた“もどかしさ”


企業や組織に属していると、どうしても会社の方針や人員配置の都合で、担当したい方や継続してフォローしたい現場に十分かかわれないことがあります。患者さんや選手が「この人に診てほしい」と感じてくださっていても、シフトや配属の都合で応えられない場面も少なくありませんでした。
自分としてはもっと深く関わりたいのに、それができないもどかしさを何度も経験したことで、「ご縁のある方を、自分の責任で長くサポートできる環境をつくりたい」という気持ちが大きくなっていきました。


質を高め合える関係をつくりたかった


複数名で交代制の現場では、どうしても担当者の考え方やスキルの差がケアの質に影響し、選手や患者さんが不安を抱く場面もありました。自分が納得できるクオリティでサポートし、その過程でお互いに成長していける関係性を築きたいと考えるようになりました。今後はそのようなスタッフがたくさんいる組織を作りたいと思っています。


「ご縁を大切にする」ことで、より深いサポートができるようになった


独立してからは、「ご縁のあった方を長く大切にする」という軸をより強く持てるようになりました。予約の取り方やスケジュールも、自分の裁量で調整できるため、一人ひとりと向き合う時間や回数を、その人に合わせて組み立てることができます。
結果として、体の変化だけでなく、仕事や生活の変化、メンタル面での変化なども一緒に追いかけていけるようになりました。「困ったときに思い出してもらえる存在」でいられるよう、ご縁に感謝しながら日々の現場に立っています。


KARiN.が大切にしていること


独立してKARiN.を立ち上げてからも、根本にある想いは変わっていません。「技術は当たり前。その先にある価値をどこまで提供できるか」。その軸を大切にしながら、体と心の両面からサポートを続けています。


技術は当たり前。根本原因を一緒に追う


鍼灸や手技、トレーニング指導といった「技術」は、専門家として備えておくべき土台だと考えています。そのうえでKARiN.では、「なぜその痛みや不調が起きているのか」「どんな背景が影響しているのか」という根本原因を一緒に探っていくことを大切にしています。
一時的な対処だけでなく、生活習慣や体の使い方、メンタル面も含めて総合的に見ていくことで、再発しにくい状態をつくることを目指しています。「とりあえずその場をしのぐ」のではなく、「一緒に根本から整えていく」ことに価値を感じていただけたら嬉しいです。


体だけでなく“心”も整えるサポート


痛みや不調が続くと、「また悪くなったらどうしよう」「仕事や趣味に支障が出るのではないか」といった不安も大きくなります。体と心はつながっているため、どちらか片方だけを見ていても、本当の意味での回復にはつながりにくいと感じています。
KARiN.では、体の状態を整えることはもちろん、「今どんなことが不安か」「これからどうなっていきたいか」といった気持ちの部分にも耳を傾けるようにしています。話すことで気持ちが軽くなったり、次にやるべきことが見えてきたりすることも少なくありません。体と心の両方が少しずつ整っていくことで、その人本来のパフォーマンスが発揮されていくと考えています。


あなたと一緒に“2人3脚”で進む治療院でありたい


KARiN.が目指しているのは、「何かあったら駆け込む場所」というだけでなく、「一緒に目標へ向かっていくパートナー」のような存在です。こちらが一方的に治すのではなく、あなた自身も自分の体に向き合い、変化を実感しながら進んでいけるような関係性を大切にしています。
長く安心して頼られる治療院であれるよう、一緒に歩んで行ければと思います。


まとめ


KARiN.では、あなたの体と心に丁寧に向き合いながら、日常が前向きに変わるサポートを提供しています。もし今少しでも痛みや不安、伸び悩みを抱えているなら、一度ご相談ください。いつでもお待ちしております。

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藤田 幸士

この記事を書いた人

藤田 幸士(KARiN.代表)
鍼灸師・スポーツトレーナーとして15年以上の経験を持ち、
東京(代々木上原)・福岡(薬院)を中心に、出張治療やトレーナー活動を行いながら、
セルフケア等の情報も発信しています。